今日、弟が死にました。
21歳。
無です。
『実感が湧かない』とはこういうことなのか、それとも私に人の心が無いからなのか、とにかく今は、無です。
前日の夜に嘔吐と下痢と腰の痛みがあって、当日朝にもその症状が続いていて、近所の内科に行こうとしたらタクシーで病院の前まで来たところで倒れて動けなくなって、三鷹の救急病院に搬送中に意識不明、心肺停止になって、そのまま戻ってくることは無かったのであった。とのことです。
多少、体が弱いところはありましたが、今回の件に関係する持病などは抱えていませんでした。
ほぼ、誰も何も予期していないところからの急死でした。本人も、死ぬ直前まで「腰痛い」で死ぬとは思っていなかったと思います。
10時10分、布団に転がってデレステでSTORYのmas+をプレイし500コンボ辺りに差し掛かり「これはフルコンいけそうだな…」と思い始めた最中、母から着信がありました。この時はもちろん「なんで…こんな絶妙なタイミングで…?コンボ切れた…ふざけんなマジで…」とジト目で着信画面を見つめ、歯を食いしばりながら不機嫌そうに電話に出たのですが。
・弟が倒れた
・容態が良くない
・『『もしかすると病院に来てもらわないといけないかもしれないから心得ておいてほしい』』
と告げられました(要約)。意味が分かりません。この時、意味が分かっている人間は弟本人も含めて地球上に一人もいなかったので意味が分からないのは至極真っ当なのですが。
電話口での内容から『死』を感じつつも「こんなソフトでライトな死があるかい」と思っていた私は、病院が三鷹なら本当に何かあった時に行きやすいなと思い、立川で買い物をすることにしました。この時点ではまだ鬼滅の刃の最新巻と黒いコカレロのことばかりを考えていました。
そして、身支度を整えて家を出て谷保駅に向かって歩き始めた11時13分。再び着信がありました。
・今すぐ病院に来てほしい
・間に合わなかった
と、分からないけど分かる表現にて伝えられました。日本的です。
救急センターに来てほしいと言われましたが、病院に着くと直接霊安室に通されました。死という言葉を一度も用いることなく、目の前まで辿り着いて視覚によって死を認識しました。
ここまでの内容は杏林大学医学部付属病院のベンチにて記しています。
霊安室を一旦退出し、受け持った救急医の先生から説明を受けることになったのですが、救急センターですからなかなか手が空かないようです。待機しています。
途中で警察が来ました。変死扱いなので警察案件になるそうです。遺体は警察に運ばれ、司法解剖となる可能性もあるとのことでした。
先生から説明を受けた後、警察に話を聞かれました。話を聞かれていたのは母ですが。
正式な死因はこの後で監察医が出すのですが、杏林の先生によると「後腹膜出血による、出血多量でのショック死」ではないかとのことでした。
腰の内側で血管が破裂して、後腹膜というところが血腫、血液まみれになり、全身の機能が低下して心肺への血流も途絶えて死亡、ということだそうです。
腰の痛みを訴えたのが今日の0時頃で、死亡したのが11時21分。体の内側が血まみれになっていることが分かったのは死亡した後でした。非常に珍しいというか、事前に察知できるような症例ではないとおっしゃっていました。
嘔吐と下痢は最初に消化器系がぶっ壊れたからで、腰の痛みはそこに血腫が出来ていたからで、朝にはもう人体の全ての機能が壊れていたそうです。血流が止まっていて、しかも漏れ出た血液が体の内側でどんどん石のように固まっていくのですから。
先生も死亡した後に調べて初めて原因が分かったほどですから、本人も母も分かるはずがありません。下痢と嘔吐と腰痛の裏側がこうなっていたなどとは。
霊安室の横で警察の方と1時間ほど話、事情聴取、をして、今(15:46)は一旦帰宅する電車内です。
最初の一文を書いてから4時間ほど経っていますが、まだ、無です。
無。
あんまりこんなことをつらつらと書いていても仕方がないのでもうやめますが、
一つ、先生から話を聞いている際に、驚くことがありました。
弟が抱えていた別の持病や手術歴や体質的なところと、今回の症状を照らし合わせたところ、
血管型Ehlers-Danlos症候群に合併した後腹膜血腫の14歳男児例
という論文の症例が近似しているそうです。あくまでも可能性の話ですが。
血管型Ehlers-Danlos症候群に合併した後腹膜血腫の14歳男児例
これ、遺伝性の疾患なんだそうです。
遺伝性。
人って死ぬんだなぁ…とボンヤリしていたら急にこっちも殴られたのでビックリしました。
あくまでも、仮定と推測と予想と可能性と確率を乗り越えた先の話ですが、
私もある日突然体内の血管が爆発して、瞬く間に死ぬかもしれません。
なので、
生きようと思います。
死ぬまでは仲良くして頂けたら嬉しい限りです。