8月30日、午後1時半。
『事』を終えた私は、黒いアルファードに送られて比叡山坂本駅に戻ってきた。
比叡山坂本駅の駅前には、前回のレポートでも紹介した『一徹』というラーメン屋さんがある。そして、『事』を終えた私はおなかが空いている。うむ、ここで食べて比叡山坂本駅の経済発展に貢献するのが、私の雄琴への感謝の気持ちということになるだろう。
ということで食べることにする。1年ぶり2回目の訪問だ。
駅から10秒。というか改札を出た瞬間、正面にこの店がある。
この佇まい、この色遣い、現代の東京ではなかなか見られないのではないか。黄色、赤色、黒の3色によるレイアウト、色あせた提灯、なんか半分だけ巻き込まれてる暖簾、雑に並べてあるアルコールの看板(これも黄赤黒)、ノスタルジーの具現化、3丁目の夕日の世界。
メニューが多く、まずは、しょうゆ、みそ、しお、とんこつ、担々麺と基本の味は全種類提供するのがこの手の店ではマストだ。なぜなら、地域住民のラーメン需要を一手に引き受けなければならないから。博多とんこつ専門店とかなぁ、贅沢だぞよく考えたら。
定食のラインナップもやたらと多い。もしかしてラーメン屋じゃなくてラーメンが主力商品の定食屋なのか?でも全ての定食には白飯じゃなくてラーメンが付いてくるからやっぱりラーメン屋だよな。
どうせならコーヒーも紅茶も出すぞ。なぜなら地域住民のカフェ的な需要にも応えないと(
入店。店内はカウンター中心だけどテーブル席もちょっとある。食べログじゃないので席数は別に数えてません。
お店はおばあちゃん寄りのおばちゃんと、おじいちゃん寄りのおじちゃんの二人で切り盛りしているようだ。おそらく夫婦だろう。客が注文するとおばちゃんが大きな声で注文を復唱し、それにおじちゃんが「はいよ!」と応えてラーメンを作り始める、そんなお店だ。
私は、ちょっと高くてちょっと推されてる感もあった『黒マー油とんこつ』(830円)を頼んだ。「黒マー油ぅ~!」「はいよっ!」
ところで、去年は何を食べたんだっけ…?全く思い出せない。
こういう店だから、当然のように漫画も置いてある。まさしく"私が小学生くらいの頃に地域にたくさんあった店"を復元したような雰囲気だ。
漫画のラインナップ、ブリーチ、テニプリ、コナン、スラダン、遊戯王…かいけつゾロリ?これ、絶対夫婦の息子が子供の頃に集めていて、息子が家を出た後で置いていったのを流用してるでしょ。うーん、息子さんの年齢は…35歳くらい?そうすると店主夫婦のお二人は大体…。うん、合ってる気がする。
卓上はシンプルに胡椒と一味だけ。
とかやってる間にラーメンが到着。
頂く。ん?まず、スープが、甘い。甘いっていっても砂糖とかの甘さじゃないけど。とんこつスープの甘みが強調されている甘み。まずいとかそういう話ではないけど、これで最後までは頑張れないかもしれない。
…だからこそ、マー油とのコントラストが合う。もしかして、そこまで計算して黒マー油とんこつのとんこつスープは敢えてクリーミーに作ってある…!?そこまでやってたら、私は『一徹』に対する「ザ・田舎の駅前のラーメン屋さん」というレッテルを剥がして丸めて比叡山の山中に捨てに行かなければなるまい。多分そんなことはないと思うけど。
麺は、黄色くて適度にちぢれてるやつ。つまり、ザ・普通の中華麺だ。とんこつラーメンにこれが入っているということは、この店の全てのラーメンには同じ麺が使われているということになるだろう。
チャーシューは、小ぶりで、どこかで食べたことがある気がする味と食感。
メンマとネギは、メンマとネギだった。
つまり、スープに少し驚いた以外は、極めて普通のラーメンだ。でも、これでいいのだ。変なこだわりとか秘伝の材料とか此処にしかない個性とかいらない。なぜなら、こういう店だから。
食べ終わりの絵面が汚い。途中で飽きてきたので15年ぶりにラーメンコショーを使ってみたら、全く味の変化が無かった。普段頑なに使ってこなかったから知らなかったけど、ラーメンコショーっていわゆる昔ながらのしょうゆラーメンにしか効かない?とんこつスープの味を変えるためには地獄のような量を振り掛けないといけない気がしたので諦めた。
なので、一味を投入したら美味しくなった。一味は大いにアリ。
お会計を済ませると、おばちゃんが「おおきに!」と言い、それを受けておじちゃんが厨房から「おおきにありがとうございましたー!」って言う。良い。
皆様も、アマンクロス…じゃなくてもいいけど、雄琴に行ったら帰りは是非とも『一徹』へ。60点のラーメンですが、それが良いんです。