あでぃすでぃす

一つ文章を書くたびに寿命と社会的評価が削れていくおブログです。

てんや

 

今日のお昼は駅前のてんやに行くことにした。何故なら、白子の天ぷらが食べられる「冬のご馳走天丼」なるものが売り出されているという情報を掴んだからだ。元々白子は大好きだが、以前一度だけ食べた天ぷらの感動がどうしても忘れられなかったのだ。

ところが、

店に着くと「府中西店開店3周年記念!12月8日のみ特別!『サンキュー天丼』390円!」という大きなチラシが誇らしげに張り出されていたのだった。

負けである。

この事実を知ってしまったが最後、1日限定で明らかにお得な『サンキュー天丼』を食べずに880円の「冬のご馳走天丼」を食べるのは負け。しかしながら、"白子の天ぷらを食べたい"という欲求を捨てて別段食べたいわけではない普通の天丼に流れるもまた、負け。

もちろん店側は年イチの大サービスのつもりでやっている。そこに悪意は全く無い。しかし、白子の天ぷら食べた~い、とキャンペーンのことなど知らずノコノコやってきた私にとっては大きなジレンマを押し付けるものでしかない。

 

煮詰まった私はとうとう「そうだ。てんやは見なかったことにして横の海鮮丼屋に行こう」とまで考え始めたが、それこそ『サンキュー天丼』に自らの人生を捻じ曲げられるという、最大の負けである。

 

結局、私は『サンキュー天丼』を頼んだ。店に入ってからも一瞬の逡巡はあったが、どう見ても普通の日に比べて数倍店内は混んでいるし、どう考えても『サンキュー天丼』以外を食べている客は皆無。今日はそういう日なのだ。目の前に示された条件に臨機応変に対応していくのも人生なのだ。と、白子の天ぷらを食べられない自分を納得させていた。

 

『サンキュー天丼』がテーブルに置かれた後、ふとメニューに目線を向けて気付いた。

白子の天ぷらは単品で追加トッピングが出来たのだ、と。